• ARC’TERYX MUSEUM

  • NEWS

  • OUTLINE

    • Exterior

    • Who We Are.

    • Product Innovation

    • ARC’HIVES

    • ReBIRD™︎

  • INFORMATION

  • EVENTS

  • BRAND PURPOSE

025

  • 石田 啓介/ムース代表

    KEISUKE ISHIDA

BETA AR GLOVE | 2012

トライデックステクノロジーを搭載したグローブシリーズのインパクトはすごかった。今でこそゴアテックスを使用したシェルグローブでも指に合わせた立体裁断が施された製品はマーケットに存在しているが、当時ハードシェルのグローブにこれだけ多数のパーツを使用し、なおかつそれをマイクロシームテープで完全防水化できる技術を持つメーカーはほかになかったし、ここまで高いフィット感を出せているプロダクトはいまだにないように思う。価格設定もびっくりするくらい高額だったけども(笑)。

指の可動域に合わせて、剥いたバナナの皮を再度縫い合わせたようなコンストラクションというデザインアイデアは新鮮だった。指一本一本が独立したパターンになっていることで、それぞれの指を単独で動かせる操作性の高さは秀逸だった。グローブのアウターとインナーの一体感を出すために、インナーフリースをあえてクラシックフリース素材にしたというアイデアにも感心した。

この見た目がきれいなのは、大切に保管していたというのもあるが、指先感覚を追求してジャストフィットのものを買ったが、ちょっとジャストすぎてインナーグローブをすることができず、厳冬期だと使う機会が減ってしまったから。だからあまりあらゆる場所で使用してきたというアイテムではないが、プロダクトとしての造形美に惹かれていたので、手放すことはなかった。アークテリクスの製造技術をもってしても、この製品を作り続けるにはあまりにも手間と時間がかかるプロダクトだったことが、廃盤となってしまった理由なのではないかと思う。

アークテリクスをお店で取り扱い始めて20年近く経つが、「アルファ」にしても「ベータ」 「スコーミッシュ」にしても、プロダクト名として長く続いているものが多いのもアークテリクスのおもしろいところ。アパレルで印象に残っているのは「アルファ FL ジャケット」。ゴアテックスアクティブシェルを使った軽量シェルで、それまでパフォーマンスとパックライトしかなかったところに、透湿性を高めたもので、当時は革新的なゴアテックスシェルだったこともあり春スキーや冬季登山によく使っていた。

バックパックでは、「サイロ」というバックカントリー用パックへの思い入れがある。店舗でアークテリクスの取り扱いを始めた初期のころ、お店のお客さまにも評判が高かった。背負ったバランスとフィット感の高さがすばらしく、加えて「質実剛健」な作りが過酷な環境での使用に適していた。アタックザックでも「シエルゾ」というシリーズがあって、今見返すとものすごく頑丈な素材だと思うけど、当時はあれが軽量パックだった。今はどちらかというと耐久性を持たせつつ軽量性を重視したプロダクトが多いけれども、当時のアークテリクスのプロダクトには「これは10年15年使えそうだね」という一目見てもわかる堅牢さが備わっていて、それがアークテリクスを特別な存在にしていた要素でもあったように思う。

bg